5月に屋久島へ行ったときのこと。
島内最大の縄文杉を訪ねた日は、屋久島の洗礼とでも言うべき雨。道のりは、往復22キロ。
私は濡れるのが大嫌いなのだけれど、滞在期間が限られているので、選択の余地なし。
森の中で当たる雨は、言わば木々の雫。そしてこの森を潤す命。いのちの雫を手のひらに受け雨音を聞きながら、これが「雨の屋久島」か。とひたすらに歩く。
雨に洗われる森はそれは美しく、視界一面むせかえるような緑。
登山口から多くのツアー客をごぼう抜きして先頭に躍り出たため、前後に誰もおらず、とても静か。ただただ、雨の音。時々、小鳥のさえずり。静か。
雨は終日止まず。静かにやさしく、時に強く、降り続く。道中ずっと雨音を聞いていた。
私は基本、山はお天気のよい日を選んで行くので、これは珍しい。
瀬音とは異なる、もっと細やかで軽い、さぁーという音。雨が葉に当たる音だね。
これが全身ずぶ濡れの情けない状況とは裏腹に、結構心地よいことを発見してしまった。
どこか落ち着く。
帰ってから間もなく、こちらも梅雨入りとなった。
どれ少し雨音をじっくり聴いてみようかと、雨の日を心待ちにすると、なぜか降らない(笑)。
屋久島では今まで「知っている」と思っていたいろいろなことをひっくり返された。
例えば「大木」のスケール、苔や朽ちた木の美しさ。そして雨の森の心地よさ。
趣を変えて、これから少し雨の中も歩こうかな、と思うようになりました。
(ただし森の中限定ね。稜線はしゃれにならんから~笑)。